無農薬野菜を食べる?
1,農薬の検出頻度
 まず、科学的に慣行栽培野菜が健康に悪いというデータはないし、無農薬野菜が健康に良いというデータもありません。「いや、無農薬が良いという本や記事を読んだ」という方もおられると思いますが、それは「宣伝」であって、その根拠は非常にあやふやなものです。

農薬検出濃度

無農薬果物

慣行果物

無農薬野菜

慣行野菜

<0、01ppm
<0、1ppm
<1、0ppm
<10ppm

14%
45%
40%
−−−

12%
51%
32%
 2%

23%
65%
10%
−−−

16%
58%
24%
 2%

 この表は生協等も含めて25万点の分析を行った結果ですが、無農薬栽培として市場で売られている物とそうでない物では農薬の検出頻度はほとんど同じで、無農薬の方が若干低めの値が出る程度であることがわかっています。この程度であれば高価な無農薬野菜を買う必要性はないと考えて差し支えないでしょう。
2,味
 無農薬栽培の作物がおいしいという話はよく聞きます。味は主観的なものでその人が無農薬栽培の作物がおいしいと言えば、それは事実であって違うということはできません。しかし、もしも無農薬・慣行の区別なく皿に並べて、食べ比べさせてみたら結果はどうなるでしょうか?味を決める決定的な要素は、見た目とイメージと香りであって、口に入れる前に9割がたは決まっているものです。テレビで芸能人に安物のワインと超高級ワインを目隠ししてあてさせる番組をやっていますがわからないものです。
 人は食べなれたものをおいしいと感じる習性があり、ミネラル水と水道水を目隠しして飲ませると水道水をおいしいと答える人が多いというデータを見たことがあります。また、慣行栽培品は食べなれている上に一般論として見た目が良いのでおいしく感じる人が多いと思います。
 どんなにおいしそうな無農薬栽培レタスでも、一皮めくってアオムシでも出てくれば食べる気をなくす人は多いでしょう。人の感覚とはそういうものであるということは認識すべきではないでしょうか。
3,好きな人は選べばよい
 1,2を踏まえた上で、「それでもやっぱり無農薬」という人がいても別にかまわない。なにを食べるか選ぶ自由はあるので他人が指図する問題ではないと考えます。ただし、他人や農家を巻き込まないで欲しいと思います。農家は無農薬でやるとなると手間が非常にかかります。それを強制しないようにして欲しいと願います。一方、好んで無農薬でやりたいという農家もあります。無農薬でできるに越したことはありませんから、その人たちが作った作物を値段を高く評価してやって欲しいと思います。
現在の農薬の技術的な問題点
1、抵抗性の発達
 同じ種類の農薬を使い続けると 、だんだん効果が落ちてきます。それを抵抗性といい ます。これは避けられないので新しい農薬を開発しますがイタチゴッコです。 これを防ぐためには薬剤に頼らない方法を開発しなければいけません。 それがいわゆる生物農薬などです。それらを組み合わせて管理することを 「IPM(総合管理)」といいます。この分野の発展が期待されます。
2、安全性評価の更なる発展
 農薬の安全性は現在の科学レベルでは確認されていますが、将来にわたってそうかというと必ずしも保証は出来ません。農薬に限りませんが、現在アレルギーや環境ホルモンの問題が出てきていますので何らかの対応が必要でしょう。そのための試験方法の確立などが求められています。
3、散布基準の徹底
 農薬の安全性は使用法に関する全ての決め事が守られた場合に確保されるのであって、これらが破られているとあらゆる安全性が保証されません。現在たいていの農家で守られているようですが、これを完全に100%に保っていかなければいけないでしょう。
4、空容器の処分
 農薬は昔はガラスビンに入っていることが多かったのですが、燃やせないので今はポリビンに変わっています。ところが、今度からダイオキシン問題のあおりで燃やしてもいけないことになり、空容器は産業廃棄物として取り扱われることになりました。簡単に処分できる容器または現行容器の処分法などの開発が求められています。
有機農法の本質
1、有機農法の定義
 ガイドラインとしては3年間全く農薬や化学肥料を使わなかった田畑からとれた作物を有機栽培作物と定義されているので、こういう農業をやるための方法が有機農法と言えると思います。農薬を使わないといってもマシン油など天然系の一部の農薬は使っても良いとされています。肥料は堆肥などの有機肥料を使うことになります。一方、同じ地区内の慣行の栽培法に比べて、農薬の使用量が半分以下程度なら低農薬栽培となりますが、その定義はあやふやです。
2、有機農法の目的
 なぜ有機農法が今注目されているのでしょうか?おそらく消費者側に「有機農法=健康」とか「農薬=アトピー」みたいな、有機農法で出来た作物が健康にいい(裏を返せば普通の作物が健康に悪い)というイメージがあって、そういったニーズに農家があわせた点。農家側に農薬や化学肥料が環境に悪いというイメージがある点。この2つが大きいと思います。特に現在は産地間競争が激しいので、他の産地と差別化しようとして主に若手農家を中心に有機農法に取り組むところも出てきています。
 しかし本来、有機農法の目的は物質循環の確立にあるはずなのです。物質循環とは下の図に示したものです。植物が成長するためには、光と水と炭酸ガスと土からの養分(肥料)が必要です。光は太陽から、水と炭酸ガスは循環しています。しかし、養分(主にリンや鉄など)は現在社会では循環していません。それを循環させるためには、この図の赤線部分が必要です。
 江戸時代までは赤線部分は肥だめや土葬という形で機能していました。現在は生産地と消費地が離れてしまい排泄物を田畑に運ぶのは困難だし、下水道の発達などにより赤線部分はなくなりました。そのかわり化学肥料を投入することで養分を補っています。化学肥料の原料であるリン鉱石の資源はまもなく枯渇すると言われており、また別の原料であるアンモニアや硝酸類も多くのエネルギーを投入(つまり石油消費)して作っているので石油がなくなればピンチです。
3、解決への道
 堆肥の利用がなんといっても重要です。畜産からでる家畜のフンなどの利用はかなり進んでいますが、わらや油かすなど収穫した植物の残りの利用方法も発展させるべきでしょう。また、食べ残しを中心とする生ゴミの肥料化(コンポスト化)も重要になるでしょう。これは食料リサイクル法というのが施行され、外食産業などを中心にある程度義務化される見込みです。また、人間の排泄物も循環されるべきで、下水道の浄化に使われる活性汚泥を堆肥化する技術も研究されています。
 日本は食料輸入国なので、以上のような方法で堆肥を作っても、食料輸出国(主にアメリカやオーストラリア)に輸出しないといけないことになります。こういう面から見ても食糧自給率のアップが望まれます。
4、現在の有機農業の問題点
 日本の有機農業の定義である「3年以上無農薬無化学肥料」というのが科学的にも根拠に乏しいし、また農家サイドから見てもハードルが高すぎます。循環型農業を目指す上では化学肥料を極力控え、コストが少し上がっても有機肥料に切り替えるべきであり、その上では農薬を適度に使う方が収穫も上がり、技術的にも農業として難易度や収穫量の安定など農家として取り組み安くなるし有用だとたてきは考えます。現在は消費者サイドからの食の安全性という科学的根拠に乏しいイメージに振り回される形で有機農業が定義されていますが、むしろ将来の食の供給や資源の循環(環境への低不可につながる)に目を向けるべきではないでしょうか。
環境保全型農業
 環境をできるだけ汚さない農業というのが、今後ますます重要になってくると思います。さらに資源を浪費しない農業というのも重要でしょう。ここでいう資源とは石油やリン鉱石などを指します。なぜ、この2点が重要かというと、農業を将来にも永続的に続けていくためです。それができなくなれば江戸時代のような全部人力の農業に戻らざるを得なくなります。それどころか農地の環境が汚れることで農地として使えなくなることもありえます。
1、農地そのものが自然破壊?
 農地というのはそれ以前には森であったり沼地であったりした場所です。そこを人間の都合で切り開いて、人間が利用するために作物以外の動植物を排除する事で成り立っています。さらに酪農となると環境破壊は著しく、ヨーロッパも中国も数千年前までは森に覆われていたのに今ではみな平原や砂漠となっています。日本に森が多いのは日本は農耕民族で酪農を行っていなかったためとも言われます。このように考えると農地はできるだけ少ない方が地球環境には望ましいと思えます。
 最近は焼き畑農業のような露骨な環境破壊型農業は減りましたが、一方ではトウモロコシや麦などの畑作地帯では土壌が風や水で浸食されて農地面積が減少してきています。また、過剰な放牧により草が減ってしまい中央アジアやアフリカなどでは砂漠化が進行しています。
2、少ない農地でたくさん収穫するのが自然保護になるはずだが・・・
 では、できるだけ少ない農地でたくさんの食料を得ることができれば良いとなるわけです。そのためには肥料や農薬をたくさん使い、機械化して効率を追求する必要があります。しかし、そのことが農薬による直接的な環境破壊を招くという痛い経験を生み、化学肥料は資源量に限度があり、しかも土壌の構造に悪影響を与え砂漠化などを進展させるきっかけにもなっています。つまり、高い収穫量を追求するあまり農地への環境負担を強めてしまい、長期的に見るとマイナスの方向へと向かわせてしまいました。
 そして、農業の機械化は多大な功績をもたらしましたが石油を消費します。21世紀には石油がなくなることも十分に考えられます。その際には今の農業を続けることは不可能となります。
3、実は効率が低い現代農業
 現在農法は多収穫を実現していますが、実はエネルギー効率は昔に比べて悪くなっているのです。「大江戸エネルギー事情(講談社)」によると、計算法は省略しますが、エネルギーとして54万kcalを投入して820万kcal 相当の米を収穫していた、、、つまり投下エネルギーの15倍のエネルギーを得ています。一方、現代農法ではたったの1.5倍にしかなっていないというのです。現代農業は石油やリン鉱石を食べ物に変換しているようなものです。これは本来の農業の姿とは言えません。
4、今の環境保全農業は・・・
 今言われている環境保全農業は単純に農薬を減らせばよいとかいうレベルでしか論じられていません。農薬を減らして収穫が減れば、同じ収穫量を得るためには多くの農地が必要になりなり環境破壊につながります。そういうバランス感覚に乗っ取った議論というのはあまり見られません。
5、どうすればいいのだろうか?
 農業による環境破壊を防ぎ、農業を未来に持続させるためには農業の効率を上げることが必須です。そのためには適当な農薬の使用が不可欠です。もちろん、そこで使われる農薬は環境毒性の低いものでなければなりません。化学肥料も無駄の少ない緩行型に、機械類もできるだけ少なくできるようにあまり手間のかからない品種の開発などが求められるでしょう。例えば除草剤に耐性を持たせた遺伝子組換え作物は、従来雑草対策として耕さなければならなかった畑を耕す必要がなくなる(不耕起栽培)が可能となり、手間が省け耕起する事による土壌流出も防げます。こういった視点での技術開発が求められるようになるでしょう。
ポストハーベスト農薬の考え方
 ポストハーベスト農薬は新聞などでも悪の代表のように取り扱われていますが、冷静に考えてみる必要があると思われます。
1、ポストハーベストってなに?
 ポストハーベスト農薬は日本語にすると「収穫後処理農薬」となり、それに対して普通の農薬は収穫前にまくので「収穫前処理農薬」、英語ではプレハーベスト農薬となります。両者の違いは例えばみかんなら木にぶらさがている時にまくか、木からもぎ取った後にまくかだけということになります。
 日本では収穫前にまく薬剤は農薬の範疇に入りますが、収穫後にまくのは食品に添加する薬剤と同じ範疇となり食品添加物(保存料)と同じ扱いとなります。ですから法律的にも異なるし、使用を認可されるための手続きも異なり、日本ではプレとポストは全く別のものとして取り扱われます。しかし、こういう分け方をしているのは日本の法律であって、アメリカなどでは共に Pesticide の範疇となり特に区別されるものではありません。このあたりが、誤解を招きやすいところで、「なんで農薬が食品にぶっかけられているんだ!」という話につながってしまいます。
2、ポストハーベスト農薬のどこが問題?
 プレだとまいてから太陽光や雨風などで農薬は分解します。ポストだとそれがないので農薬は分解しにくく危険だという考え方もあり、これは確かに一理あります。しかし、プレが全部分解している保証はないし、ポストが全く分解していないわけでもなく、結局は食べ物に残留している薬剤の種類と量を分析した結果が最も重要でしょう。そもそも、プレであろうがポストであろうが、どのような薬剤がどれぐらい最終的に我々の口に入ってくるのかが興味の中心であるべきで、ポストハーベストだからダメでプレハーベストなら悪くないというのは乱暴な話です。
3、ポストハーベスト農薬の安全性は?
 ポストハーベストで使われている薬剤には穀類の殺虫剤としてマラソンやMEP(スミチオン)、果物の殺菌剤(防かび)としてイマザリルやTBZが使われています。平成10年の残留農薬分析結果を見ると、輸入のレモンやグレープフルーツからは50%以上の高率でイマザリルが検出されています。しかし、その全てが残留基準値以下となっており、しかも基本的に皮は食べないので、皮を食べる場合を含めても総合的に口に入ってくる量は微量となり健康に影響するとは考えにくい量となります。
 ところで、残留基準値は80年代以降にアメリカの要請がもとで従来の基準値をゆるめたものです。これこそが輸入作物のポストハーベストが最も疑念をいだかれている点ですが、私はある意味当然のことと考えています。もともと日本人はレモンやグレープフルーツなど食べなかったわけですが、今では食卓になくてはならないものとなっています。しかし、輸入するためには船での長旅に耐えなければなりません。みかんなどを箱に詰めておけば青カビがわいて箱の中が全滅することは誰でも体験があると思います。そいつを防ぐためには何か手を打たなければならないわけで、ポストハーベスト農薬を使うことは最も確実でコストが安くエネルギー的にも有利な方法と言えます。若干のリスク増大は招きましたが、どちらにしてもそれほど心配するほどでもなく、おかげでレモンやオレンジやバナナなどを安く食べることができるようになったことの方を喜びたい、というのがたてきの考え方です。
4、ポストハーベスト農薬を他のものにたとえて考えると
 これは車でたとえれば、日本においては操作性が劣り事故のリスクが高いであろう左ハンドルの車を締め出すよりも、世界のいろんな車を輸入して楽しむために左ハンドルの輸入も認めてしまおうという考えに近いと思います。
 また、若干のリスク増大を問題視する必要もあるとは思いますが、基本的に毒性には閾値というものがあり、閾値以下の量ではリスクがないとするのが普通です。これは水深10メートルのプールなら多くの死者が出るはずですが、水深1メートルならまず問題なく、さらに水深1センチなら全く心配ないでしょう。水深1センチのプールを水深3センチにしても溺れるリスクは3倍とはならないことはわかると思います。これが閾値の考え方です。
 「食べたら虫が死ぬような穀物を食べさせられている」、、、などといったキャンペーンも見かけます。食べたら虫が死ぬ、、、当たり前です。殺虫剤はそのためにかけてあるのですから。人間に毒性が低くて虫に毒性がつよいから殺虫剤です。「かけたら菌が死ぬような薬を注射されている」、、、医療用抗生物質をこのように表現したら笑ってしまいませんか?同じことです。なぜ、食の分野ではこのような笑い話が大まじめで通ってしまうのか不思議です。
5、バランス感覚を持ってポストハーベスト農薬を文化としてとらよう
 やはりバランス感覚が重要だということをわかっていただけると思います。ポストハーベスト農薬の基準値が外圧でゆるめられた・・・そんな単純な話ではないのです。日本人の嗜好の変化、経済、農業生産、保存技術、毒性、コスト、海外事情など総合的に判断しなければいけないのです。そして、そのことは最終的には人間の文化としてポストハーベスト農薬がどのような位置づけになっているのかを確認することになるのです。その上で必要か必要でないかを判断したいものです。
水道水中の農薬
 飲料水、主には水道水に農薬はどれぐらいの量が入っていて、健康に影響を及ぼしているのでしょうか?(資料:農薬の環境科学、農薬毒性の事典など)
1、入ってる量
神戸市(83年) ブタクロール(除草剤) 最高 23ppt
  IBP(殺菌剤) 最高 11ppt
  ダイアジノン(殺虫剤) 最高 5ppt
大牟田市(83年) クロメトキシニル(除草剤) 最高206ppt
北海道(83年) CNP(除草剤) 最高 60ppt
東京都(83年) CNP(除草剤) 最高 93ppt
 これらは農薬が検出された例の中から最高濃度のものを引用しました。実際には大部分がこれ以下の農薬しか検出されていません。
2、水道水中の農薬の安全性評価
 大人が一日に摂取する水道水を2リットルとして計算することになっていますから、水道水からの農薬の摂取量を神戸のブタクロールで計算すると、
2リットル × 23ppt = 46 ナノグラム = 0.046 マイクログラム
 毒性はマウスでの最大無作用量(毒性を示さない最大濃度)が 5000 マイクログラム /kg 体重 だから、生涯1日許容摂取量(ADI)に換算すると、最大無作用量に大人の体重分の 50 を掛けて、安全係数の 100 で割るので、2500 マイクログラム。水道水からの農薬摂取はADIの1%以下にすべしとなっているので、25 マイクログラム以下にするのが目安となります。
 この例では測定水中、最大にブタクロールに汚染された水道水でもADIの5万分の1以下、飲料水からの摂取上限の目安に対しても500分の1以下となります。
3、水道水中の農薬の基準値
 93年以降、17の農薬がチェック対象になっています。先の例では クロメトキシニル(今はこの農薬は使われていません) 最高 206ppt。基準値は 8000ppt で、大きく下回っていることになります。
4、まとめ
 水道水中から農薬が検出されることはあります。しかし、その濃度はごく微量であり、健康に影響を及ぼす可能性は、ほとんどないと考えられます。
 しかし、識者から水中の農薬が水道水を消毒する際の塩素によって分解し、一部は毒性のある化合物に変化している、との指摘があります。この点は今後の検討課題として浮上してくるでしょう。
5、浄水器で水道水から農薬を除きたい
 浄水器には色々なタイプがあります。中空糸で水をろ過するタイプでは農薬はろ過されません。アルカリイオン型の製水器は農薬の分解には寄与しません。沸騰させても一部を除いて農薬は分解しませんし、蒸発もしません。農薬を除くためには、活性炭で吸着浄化するタイプを選ぶべきでしょう。しかし、どれぐらいどの農薬が除かれたかというデータを見たことはないので確かなことは言えません。
農家vs近隣住民
1、住民の感覚
 「 マンションの真下に果樹園があり、天気のよい昼間に農薬を散布しています。晴れの日は洗濯物をたくさん干したくなるのですが、農薬が飛んできて洗濯物についてしまうような気がします。実際にはどうなんでしょうか。家の中にいると独特のにおいがはいってきます。農家の人が専用のマスクをしているのをみると、不安が増してきます。乳幼児がいるので、神経質かとも思いますが教えてください。 」
 HPの掲示板にあった書き込みですが、住民側の感覚を代表していると思います。きつめの意見で「マスク・手袋の重装備で農薬をまいている農家を見ると、自分たちだけ安全装備して住民はほったらかしか」といったメールもありました。空散(ヘリコプターから農薬をまく)に対する反発も根強いものがあります。
 住民側が上げている問題点をまとめると
1,農薬がどれぐらいが飛んできているのかわからないことへの不安
2,飛んできた農薬による健康への悪影響
3,洗濯物や家が汚れることへの不満
2、農家の感覚
 「臭いだの洗濯物が汚れるだのといった苦情を、申し立ててくる人がいます。その一方では防風垣や樹に虫がいるから駆除してほしいと行って来る人がいます。直接言ってくる人はまだ良い方で、中には市役所などに苦情を申し立てる輩もいてこちらとしては、話し合いをする機会すら与えてくれず、どうすりゃいいの?と言いたくなります」
 「田(又は畑)に住宅を建てた方がほとんどなのではないでしょうか。一農家としては後から押し掛けてきた人に文句を言われるのは・・・と思うのですが」
 この2つが代表的な意見です。
 特に後者の方は注目しないといけません。衛星都市の新興住宅地は一般的に農地からの転換であり、農薬をまいている農家にすれば「あとから来てなに言うてんねん」「農薬いややったら最初からこなけりゃええんや」となるわけです
以上ふまえて、解決策を考えると
1,住民と農家の話し合いの機会を作る
 そんなこと出来たら苦労せんわ!と言われそうですが、やはりこれしか解決策はありません。スジから言えば困っているのは住民なんだから住民側から話しかけるべきです。しかし、個人の農家に言えばいいというわけではないので、どこに言いに行けばいいのかわからないのも実状でしょう。
 農家は先に挙げた理由で「話を聞く必要はない」と思っているかもしれませんが、なにも対策せず住民との関係が悪化した場合に、損するのは誰か考えてみる必要があると思います。嫌がらせをうけたり係争に巻き込まれたときに、数が多いのは住民側なのでいやな結果になってしまうのは農家の方になる可能性があるのです。農薬というものが世間的に嫌われているし、マスコミも反農薬サイドにいることも住民側に追い風になります。
 農家は個人で無理なら話し合いの窓口を作るべきです。農協などでも良いのですが、もっと小さな地域での問題でしょうから、青年団などの小回りの利く組織が理想的でしょう。
 住民はまずは当事者の農家に姿勢を低くして相談しましょう。自分たちが住んでいるところが今は街でも昔は農村だった(東京のど真ん中でも)ことを常に頭においておくべきです。そして、役所などにいく前に町内会などに相談しにいくべきです。新興住宅地の住民は町内会などにあまり入っていませんが、町内会の上役は地区の古参住人で農家であることが多いのです。例えばマンションの管理組合で農薬の問題を出し合い、まとめて町内会や農家に相談しにいくようにしたいですね。
2,農家は自主規制を
 1の解決策は理想的すぎるというご意見もあるでしょう。では、農家の方はせめてもの自衛策と住民へのサービスとして、使う農薬とまくタイミングに気を使ってやってはどうでしょうか?例えば、
 1,粉剤や土壌消毒は極力避けて、粒剤にする。
 2,溶剤臭がする乳剤はやめて水和剤やフロアブル剤にする。
 3,においのきつい有機リン剤はやめる。
 4,散布は風の強い日はさけ、午前中、できれば早朝に済ませる。
 5,散布スケジュールを近所に知らせておく
 6,安易な農薬散布は避ける
3,住民は決して感情的にならず建設的に
 農家の気持ちを考えて上げてください。あとから来たよそ者に文句を言われることや、直接対話する前に役所から人が来たりすることが、どんなに気分の悪いことか想像してみてください。きっちり筋を通して、冷静に2で上げたようなアイデアを提案してみてください。もしもそのために農家がコストアップを余儀なくされるなら、その一部を負担してやるぐらいの用意も必要です。得するのは農家ではなく自分なんですから。
 「そんなうまいこといくもんか」と言われる方もおられるでしょうが、少しでも理想的な方向へお互いが進んでいただきたいと思います。

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